F1タイヤレギュレーションのまとめ 2007シーズン


2001年以降、メーカー間のスペック競争でレースの勝敗に大きな影響を与えていたタイヤですが、2007シーズンからはワンメイクとなりタイヤに関するレギュレーションも大きく変更になりました。そこでシーズン開幕前に変更点をまとめてみます。

※以降引用しているレギュレーションは07/03/10時点での最新版を使用していますが、変更される可能性もあります。最新のレギュレーションについての正確な情報はFIAのサイトから確認してください。
Formula One Regulations

※走行セッションの呼称は金曜日の午前、午後のセッションをそれぞれP1,P2、土曜日午前のセッションはP3となります。その後予選、日曜に決勝が行われてイベントが終了します。

ドライタイヤの種類

1回のグランプリで各チームへ供給されるドライタイヤの種類は去年と同じくプライム(コントロール)とオプションの2スペックです。ただし、去年まではチームごとに違ったスペックのタイヤを用意している場合もあったため、それぞれのタイヤメーカー全体では3つ以上のスペックが用意されるような場合もありましたが、2007シーズンからは全チーム共通で2種類となります。
また2007シーズンからは走行中にどちらかのスペックか見分けることが出来るように、タイヤのウォール部分へマーキングが入るといわれています。

使用可能なタイヤセット数の変更

まずは各ドライバーが1レースに使用可能なドライタイヤの最大セット数ですが

(2セット+1セット+4セット)x2スペック=14セット

に変更されました。2006年までは7セットでしたので倍になってます。しかしタイヤ自体は去年までも2スペックを作ってサーキットへ持ち込み、ホイルへ組んで使用しなかった分も含めて廃棄していたので、メーカーとしては変化無いとのこと。ムダに捨てるより使ってしまおうよ、って方向らしいです。
ただし、この14セットは金曜?日曜のグランプリイベントとおしての最大数ですので、全部を自由に使えるわけではありません。

金曜日の分離

2007シーズンから金曜は2レースエンジン規定から除外されることになりました。これと同様にタイヤについても金曜専用のタイヤが割り当てられています。

25.5 Use of tyres
a) Each team will be allocated eight sets of dry-weather tyres, four of each specification, for use during P1 and P2. These are the only dry-weather tyres which may be used during these sessions and must be returned to the tyre supplier before the start of P3.
それぞれのチームは8セットのドライタイヤ、4セットの同一スペックをP1とP2において与えられる。
これらはドライタイヤのみであり、P3開始前にタイヤ供給者へ返却しなければならない。

レギュレーションでチームに対してタイヤが与えられるとされているのは、金曜のみ走行するドライバーを起用できることによるものだと思われます。
ただし、チームに対して与えられているからといって1人のドライバーが同一スペックばかり4セット使用することはできません。

25.3 Quantity of tyres :
During the Event no driver may use more than fourteen sets of dry-weather tyres, five sets of wet-weather tyres and four sets of extreme-weather tyres.
No driver may use more than two sets of each specification of dry-weather tyre during P1 and P2.
No driver may use more than one set of wet and one set of extreme-weather tyres during P1 and P2.
A set of tyres will be deemed to comprise two front and two rear tyres all of which must be of the same specification.
イベントを通していかなるドライバーも、14セットのドライタイヤ、5セットのウエットタイヤ、4セットのエクストリームウェザータイヤを超える数のタイヤを使用してはならない。
いかなるドライバーもP1とP2において、同一スペックの2セット以上のドライタイヤは使用できない。
いかなるドライバーもP1とP2において、1セット以上のウエットタイヤ、エクストリームウエザータイヤは使用できない。
タイヤのセットとは2本のフロントタイヤと2本のリアタイヤで構成され、それらすべてが同一のスペックでなければならない。

土曜日以降のタイヤ

土曜・日曜に使用するためのタイヤはドライバーごとに10セットが与えられますが、P3終了後、両スペックから1セットずつを返却しなければなりません。これはタイヤの温存を目的に土曜の午前中に走行しないことを防止する意図だと思われます。

25.5 Use of tyres
b) Each driver will be allocated ten further sets of dry-weather tyres, five of each specification, for use during the remainder of the Event. However, one set of each specification must be returned to the tyre supplier before the start of the qualifying practice session and may not be used during the remainder of the Event.
各ドライバーへさらに10セット、それぞれのスペックが5セット、のドライタイヤが残りのイベントで使用するために与えられる。
しかし、それぞれのスペックから1セットは予選開始前にタイヤ供給者へ返却し、残りのイベント中に使用することはできない。

つまり予選開始時点で

4セットx2スペック=8セット

が各ドライバーの手もとに残ることになります。予選は去年と同じく3ラウンドのノックアウト方式ですので、それぞれで同一スペックのニュータイヤを使用した場合、決勝には予選で使用したスペックのニュータイヤが1セット残ることになります。もちろんQ1(予選1回目)を別スペックでクリアできれば2セット残ります。

決勝で使用するタイヤ

これまでに比べて最も目立つ変更です。決勝中2つのスペック両方のタイヤを、少なくとも1セット、必ず使用しなければなりません。ただし、ウエットもしくはエクストリームウエザータイヤを使用した場合はこの限りではありません。

25.5 Use of tyres
f) Unless he has used wet or extreme-weather tyres during the race, each driver must use at least one set of each specification of dry-weather tyres during the race.
レース中ウエットタイヤもしくはエクストリームウエザータイヤを使用しない場合、ドライバーはそれぞれのスペックのドライタイヤを少なくとも1度は使用しなければならない。

この規定は正直、意図を計りかねますが、おそらく最初からタイヤを決めうちせずに、グランプリイベント中に両方のスペックのタイヤで実際に走行してデータを収集しなさい、ということではないかと思います。金曜専用、土曜日午前用とタイヤを用意し、金曜は2レースエンジン規定から除外したのはイベントを通しての走行を増やす意図であることはまちがいないでしょう。であれば去年までのようにタイヤのスペックを決め打ちすることで走行が半分になってしまうことを避けるためのルールではないかと思います。もちろん決勝中1スティントのみラップタイムが落ちてしまうことによってオーバーテイクを演出(?)というも狙いもあるのでしょう。

予想される変化

まずはとにかくマシンの走行の増加が予想されます。繰り返しになりますが、各セッションごとに専用とも言えるタイヤを割り当て、金曜についてはエンジン規定からも除外されています。これによって金曜日にマシンを走らせないメリットが消滅します。またテスト日数制限が強化されるとの話ですし、決勝で2スペックのタイヤを使用するためのデータ収集としてトップチームも積極的に金曜日に走行を行うことが予想されます。
決勝でのタイヤ規定による影響で今のところ確実そうなのは、1ストップはないだろう、ということぐらいでしょうか。スペックが変わることによるラップタイム変化の度合いが大きく影響しそうですので、裏スペック(1スティントだけ使う側のスペックという意味、のつもり)でのスティントの長さはサーキットごとに最適解が変わるのではないかと予想します。

誤訳・勘違いの指摘・ツッコミ大歓迎。


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